流斗さんと蘭が帰って、リビングは急に静かになった。
ソファに腰を下ろし、みんなで温かい飲み物を手にする。
私とお兄ちゃんはココアで、父と母はハーブティー。
甘い香りとハーブの匂いがまじり合い、心までほぐれていくようだった。
幸せをかみしめながら、私は兄に視線を向ける。
目が合うと、優しい微笑みが返ってきた。
「唯、あのこと、咲夜くんから聞いたんだってね」
静寂を破ったのは父の声。
いつもより少し硬く、慎重さを含んでいた。
父の言う「あのこと」とは、きっと――
「うん……全部、聞いたよ」
私は姿勢を正し、父と母をまっすぐ見つめた。
父がひとつ頷き、母と目を合わせる。
母も小さく頷き返し、そして二人は私の前で同時に頭を下げた。
「今まで黙っていて、ごめん」
「ごめんなさい」
突然のことに、思わず目を見開く。
「えっ! な、なに? そんなのいいよ、頭を上げて」
慌ててそう言うと、ふたりはゆっくりと顔を上げた。
「いつか話さなきゃとは思ってたんだ。
でも唯の顔を見ると……どうしても言い出せなくて、ここまで来てしまった」
「唯ちゃんの傷つく顔を、見たくなかったの」
ふたりの表情や瞳には、深い愛情と後悔が滲んでいた。
その想いが、じわっと胸に沁みてくる。
「うん、わかってるよ。
もし私が同じ立場だったら、きっと同じことしてたと思う」
ふわりと微笑むと、ふたりの顔も少しほころんだ。
そう、ちゃんとわかってる。
お兄ちゃんも、お父さんも、お母さんも――
みんな、私を大切に想ってくれていることを。
傷つけたくない、守りたいという気持ちが、沈黙の裏にあったんだ。
「私、大丈夫だよ。
誰のことも恨んでないし、お兄ちゃんのことも……嫌うなんてありえない。
お母さんだって、きっと天国で私たちを見守ってくれてると思う。
私はこの家族が大好き。
いつも想ってくれて、愛してくれて――本当に、ありがとう」
涙がこぼれ、頬を伝っていった。
「唯……」
兄の手がそっと頬に触れ、指先で涙をぬぐってくれる。
その仕草があまりにも優しくて、胸がぎゅっと締めつけられた。
視線を上げると、
父と母が左右からそっと近づいてきた。
そして、私たちをふわりと抱き寄せる。
大きなぬくもりに包まれて、心まで満たされていく。
――私はこの夜、家族の絆をあらためて感じた。
