私は視線を流斗さんの方へ向けた。
その気配を察したのか、彼が静かに歩み寄ってくる。
蘭は空気を読んだように、私からそっと身を引いた。
やがて目の前に立った流斗さんが、潤んだ瞳で優しく微笑む。
「唯さん……おめでとう」
その声はあたたかくて、少し切なかった。
胸の奥がじんとする。私は流斗さんに、ひどいことをしてしまったから――。
「短い間でしたけど、唯さんの彼氏になれて、本当に嬉しかったです」
差し出された手を見つめ、少し戸惑う。
けれど、しっかりと握りしめた。
ぎゅっと力を込め、ありったけの「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝える。
「流斗さん……いろいろ、本当にありがとうございました。
そして、こんな形になってしまって、ごめんなさい。
図々しいかもしれませんが、これからも仲良くしていただけたら嬉しいです」
私の言葉に、流斗さんは静かに頷いて微笑んだ。
その時だった。
「あれ? もしかして流斗くん、唯と付き合ってたの?」
父の唐突な声に、場の空気が一瞬凍る。
流斗さんの目がぱちくりと瞬いた。
「え、ええ……まあ、少しだけ」
その返事を聞いた瞬間、父がくるっと私の方を振り向き、勢いよく詰め寄ってくる。
「唯、聞いてないぞ?」
なんだか……顔は笑ってるのに、声が怖いんですけど。
そういえば、彼氏がいるとは言ったけど、誰かまでは話してなかった。
「お父さん、落ち着いて。これには、深く長〜い事情が……」
「どういうことか、聞かせてもらおう」
ずずいと迫ってくる父。
めちゃくちゃ怒っているらしいのに、その顔は満面の笑み。
ほんと、怖いんだけど。
「私も聞きたいわ〜」
父の横から、母が目を輝かせながらひょっこり顔を出す。
興味津々というより、完全にノリノリの顔だった。
私は頭を抱えた。
うわ……これ完全にやっかいな流れじゃん。
まさか今になって、こんな形で説明することになるとは――。
気分が一気に重たく沈んでいく。
こうして、私は両親にこれまでの経緯を一から話す羽目になったのだった。
……よりによって、クリスマスに何してるんだろ、私。
