ドキドキドキ――。
胸の音が、自分でもわかるくらい響いていた。
「俺、唯のこと好きだ。
ずっと前から……。
誰にも渡したくない。流斗にも」
「あ……」
“私も”って言いたいのに、喉が詰まって何も言えない。
ずっと願ってきた奇跡が、今、目の前に――。
想いがあふれて、胸がいっぱいで、言葉にならなかった。
「今さら、遅いかもしれないけど……」
「遅くない!」
ようやく、声が出た。
「私も……お兄ちゃんが、好き!」
その言葉に、兄の目が大きく見開かれる。
周囲の人たちも、ちらちらとこちらを振り向く。
しまった。お兄ちゃんって……つい言っちゃった。
ちょっとまずかったかも、と慌てる。
兄は何も言わず、ふいに視線を落とした。
ど、どうしたんだろう……。
不安になりかけたそのとき、兄がゆっくりと顔を上げる。
そして、静かに私の方へ歩み寄ってきた。
すぐ目の前で立ち止まった兄が、まっすぐに私を見下ろす。
至近距離で見つめられて、心臓が暴れるみたいに鳴った。
やばい、このままじゃ変身しちゃう……。
必死に息を整えようとするけど、うまくいかない。
「唯……本当か? 俺のこと、好き?」
不安げに問いかける兄の表情が、可愛くて――笑みがこぼれた。
「うん、好きだよ。
お兄ちゃんのお父さんのことも、大丈夫。
気にしてないって言ったら嘘になるけど……
でも、この“好き”って気持ちは、変わらない」
私の言葉に、兄の表情がゆっくりとほどけていく。
「ありがとう、唯。俺、幸せだ」
「私も……」
自然と、おでこがくっついた。
すぐ目の前に兄の顔がある。
どうしていいかわからなくて、視線をさまよわせた。
