店内に入ると、ふわりといい香りが漂い、軽快な音楽が耳に届いた。
私はそっと店内を見まわし、ラックにかけられた服を眺めながらゆっくりと歩き出す。
兄は少し距離をあけて、私のあとを歩いてきた。
立ち止まれば、その足もそっと止まる。
なんだか、こうしていると――まるで恋人同士みたい。
ドキドキ……。
こっそり兄を盗み見ていると、ちょうど視線が重なった。
「な、この服、いいじゃん。唯に似合うよ」
兄が手にしたのは、ワインレッドのセーター。
ふわふわした生地があたたかそうで、肌触りも良さそう。
さりげない模様が大人っぽさを引き立てていて、シンプルだけど印象に残る一枚だった。
素敵!
見た瞬間、一目惚れした。
「それ、いい! 試着してくるね」
私はセーターを受け取り、試着室へ向かった。
セーターに袖を通し、鏡の前に立つ。
……うん、悪くない。というか、すごく似合ってるかも。
なにより、兄が選んでくれたと思うと、それだけで顔がにやけてしまう。
こっそり深呼吸してから、カーテンを開けた。
すぐ目の前に兄がいて、ぱちっと目が合った瞬間、その目が少し大きくなる。
そのままじーっと見つめられて――。
思わず視線を泳がせた。
「ど、どうかな?」
「あ、ああ……いいんじゃないか。それ、買えよ」
「うん……」
お兄ちゃんに褒められちゃった。
もう、ドキドキが止まらない……恥ずかしいよ〜。
