「それじゃあ、僕たちは行ってくるよ。
唯と咲夜くんも、二人で楽しんできなさい。また連絡するから」
そう言って父が手を振る。
母もにこにこしながら父に寄り添い、背を向けた。
「え!? ちょ、ちょっと……!」
私は慌てて声をかけたが、届いていない。
二人はそのまま、あっという間に人混みの中へと消えていった。
「……行っちまったな」
兄がぽつりとつぶやいた。
私はそっと、その横顔に視線を送る。
ふたりきりなんて、ほんと久しぶり。
お兄ちゃん、どう思ってるんだろう。
なんともいえない気まずさだけが、じわじわと広がっていく。
二人とも黙り込み、
周囲の人たちの声がやけに大きく聞こえた。
「あの二人の邪魔しちゃ悪いし、俺たちも二人で楽しむか」
兄がふっと笑ってそう言った。
久しぶりに見る兄の柔らかな笑顔。
「う、うん!」
私は嬉しくて、力強く頷いた。
こうして――
両親の計らいによって、私は兄と仲直りする最大のチャンスを与えられたのだった。
