静かな室内には、何の物音も聞こえない。
時計の針の音と、胸の鼓動だけが、やけにリアルに響いていた。
「え……どういうこと?」
私は呆然と兄を見つめる。
いったい何を言っているのか、わからなかった。
私の実母は、交通事故で亡くなったと聞かされていた。
それ以外、何も知らない。
兄は思い詰めた表情で、拳をきつく握りしめ、低い声を搾り出した。
「……俺の父親が、飲酒運転したんだ。暴走したその車が、唯の母親に突っ込んだ。
それで……二人とも、即死だったそうだ」
言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
飲酒運転、暴走、即死――。
何度も頭の中でその言葉が反響する。
私の母親が……お兄ちゃんの父親に?
そんなこと、今まで誰にも聞かされていない。
お父さんだって、「交通事故だった」としか言ってなかった。
「父さんと母さんは、唯のことを想って、言えなかったんだと思う。
まだ小さかったし……このことを知ったら、俺や母さんとうまくやれなくなるかもしれないって……きっと、怖かったんだ」
言葉を失う。
家族みんなが知っていて、私だけが知らなかった。
――実の母の真相。
胸がぎゅっと締めつけられ、心臓がバクバクと脈打ち、呼吸が浅くなる。
苦しい。頭が真っ白になる。
わからない、わからないよ。なんで……なんで!
理解ができなかった。
でも、兄の目は本気だ。嘘を言っているとは思えない。
