「唯……」
兄の手がそっと伸びてきた。
思わず、そのぬくもりから逃げるように顔を背けてしまう。
重たい沈黙が、ふたりの間に落ちた。
言葉はなく、ただ時だけが過ぎていく。
やがて、兄は小さく息を吐き、覚悟を決めたように口を開く。
「これから言うことは、唯にとって……驚くことばかりかもしれない。
だけど、ちゃんと聞いてほしい」
真剣な視線が、まっすぐに私を射抜く。
その目には、揺るぎない決意が宿っていて――でも、声はどこか微かに震えていた。
「俺は、おまえのことを妹だと思ったことはない」
一瞬、息が止まった。
心臓の鼓動だけがやけにうるさく響いている。
「え……それって、どういう――」
