加奈さんを見てればわかる。兄のことがどれだけ好きか。
だから、別れを切り出したのはきっと兄の方だと思っていた。
どうやらその予感は当たってたらしい。
ふと、また思い出してしまった。
押し倒されたときのこと……そして、あのキス。
確かめたかった。
あの意味を知りたかった。
今しかないと思った私は、勇気を振り絞る。
「ねぇ、一つ聞いていい? なんで、あんなことしたの?」
「え?」
驚いた兄と視線が絡む。
瞳が揺れて、動揺を隠せていなかった。
兄も、何を聞かれているのか、わかっている。
「あ、あれは……」
「私、びっくりしたんだから! 急にあんなことされて……。
そのあとずっと避けられて……どうしていいかわからなくて、悲しくて……苦しかった」
言葉にした途端、目頭が熱くなる。
気づけば、涙がひとすじ頬を伝っていた。
その涙が、私の想いを代わりに語ってくれている気がした。
