義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 結局、あのあと私は優の姿のまま、蘭に引っ張り回されることになった。

 その間、蘭は唯のことには一切触れてこない。
 優に会えた嬉しさで、すっかり吹き飛んじゃったのかな。

 ――薄情だなあ……でも、まあ助かったけど。

 流斗さんはあれから姿を見せない。
 気を遣ってるのかな。優と蘭を二人きりにしてあげよう、とか?

 いや、蘭を怒らすと面倒だから警戒してるのかも。……なんてね。

 でも、さっきから妙に視線を感じる気がするんだよな。
 まさか流斗さん、影からこっそり見てたりしないよね?

 そんなことを思っていると、隣で蘭がはしゃいだ声をあげる。
 ほんと楽しそう。自然と頬がゆるむ。

 その笑顔を見ていたら、ふと頭に浮かんだ。

 お兄ちゃんと、学園祭。
 一緒に回りたかったな。
 いろんな催し物に参加して、美味しいもの食べて……想像がふくらんでいく。

 でも次の瞬間、あの女生徒たちの声が甦る。
「加奈さんと別れた」って噂。……本当なのかな。

「ね、優くん、聞いてる?」

 少し棘のある声に、ハッと我に返る。

「ああ、ごめんごめん」

 誤魔化すように笑うと、蘭はぷくっと頬をふくらませた。

「もうっ」

 その様子がおかしくて、つい笑ってしまう。
 さっきまで胸に渦巻いてたモヤモヤが、少しだけやわらいだ気がした。

 やっぱり蘭といると癒される。
 さすが親友。ありがとね、蘭。

 ――そのあとも、私はしっかり蘭に振り回されることになった。