義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 そして今――
 私と流斗さんは、お化け屋敷の出口の前に立っていた。

 二人で小声でタイミングを合わせる。

「行きますよっ」
「はい!」

 一斉に飛び出して、全速力で駆け抜けた。


「はあ、はぁ……こ、ここまでくれば大丈夫でしょう」

 流斗さんが振り返り、息を整えるように立ち止まる。

 私たちはお化け屋敷を飛び出し、廊下を駆け、角をいくつも曲がり――
 ようやく人気がない多目的室にたどり着いた。

 扉を開けると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
 中は静まり返り、誰の気配もない。

 そっと壁に背を預け、並んで腰を下ろした。

「少し、ここで休んでいきましょう」

 楽しそうに笑う流斗さん。その笑顔が眩しくて、つい見惚れてしまう。
 さっき走っていたときも、まるで少年みたいに無邪気な顔をしていた。

 今日の流斗さんは、心から学園祭を楽しんでいるように見える。

 それは素直に嬉しい。けれど――
 自分の姿を見下ろして、ため息が漏れた。

 ……また優になってしまった。どうしよう。