その後も、私は流斗さんのおかげで暗闇の中をなんなく進むことができた。
本来なら、わあっ、きゃーと叫ぶ場面ばかりなのに。落ち着いて歩けることが不思議なくらいだった。
そして「ゴールまでもうすぐ!」の看板が目に入った瞬間――油断した。
横から、化け猫の仮装をした生徒が奇声を上げながら飛び出してきたのだ。
「きゃあーっ!」
思わず流斗さんにしがみついた。
しかし、化け猫はそのまま走り去り、辺りはすぐ静まり返る。
……やば。私、なにやってんの。
密着する体に、意識がもっていかれる。
頬が熱くなり、息が詰まる。
気まずさに耐えきれず顔を上げると、至近距離に流斗さんの顔があった。
「流斗さん……」
「……唯さん」
静かに見つめ合う。
沈黙の中、胸の鼓動だけが妙に大きく響いていた。
流斗さんの顔が、ゆっくり近づいてくる。
ダメ、それだけはダメ。
心の中で必死に叫んでも、身体が動かない。
鼓動がどんどん速くなっていき――
そのとき。
ふいに流斗さんの表情が変わった。
驚いたような目で、じっと私を見つめてくる。
いやな予感がした。
「また……ですか?」
恐る恐る尋ねると、彼は困ったように微笑んだ。
「また、です」
そう、私は再び――優に変身してしまったのだった。
