中は薄暗く、赤いランプがぼんやりと辺りを照らしていた。
空気までひんやりしているのは、ドライアイスのせいらしい。足元には白い煙がもくもくと漂っている。
壁には血の跡のような赤い染みが点々とつき、不気味な木のオブジェが等間隔に置かれていた。
葉っぱに触れるとひやりと冷たく、背筋がぞくりとする。
「唯さん、大丈夫ですか?」
「あ、はい」
怯える私を気遣って、流斗さんが寄り添って歩いてくれる。
頼るように、そっと彼のそばへ身を寄せた。
しばらく進むと、古びた井戸を模したオブジェが現れる。
……絶対、あそこから出てくるやつだ。
足がすくんで立ち止まると、流斗さんが軽く笑った。
「大丈夫ですよ。僕が先に行きますから」
そう言って、私の手をぎゅっと握り直す。
その温もりと優しさに、ほっと胸がゆるむ。
私は流斗さんの背中に隠れるようにして歩き出した。
「わあっ!」
案の定、井戸から幽霊役の生徒が飛び出してきた。
けれど私は流斗さんを盾にしていたおかげで、それほど驚かずに通り過ぎることができた。
流斗さんはまるで動じてない。
振り返ると幽霊役の子がぽかんと私たちを見送っていた。
……なんだか、申し訳ないな。あの人は脅かすのが役目なのに。
それにしても、流斗さんってこういうの全然平気なんだ。
怖がりな私からすれば、これ以上頼もしい人はいない。
「ね、大丈夫でしょ?」
振り向いて微笑む彼に、私は素直に頷いた。
「は、はい」
流斗さんと一緒だと、不思議と安心できる。
何があっても守ってくれる――そんな気がした。
もし、本当に流斗さんを好きになれたなら。どんなに幸せだろう。
私は彼の手をそっと握り返した。
