義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 そうこう悩んでいる間に、食事はあっという間に終わってしまった。

「次はどこ行きますか? あ、僕が行きたいところでいい?」

 流斗さんはいつもの調子で、ふわりと問いかけてきた。

「え? あ、はい……」

 戸惑いながら、小さく頷く。

 結局、何も切り出せないまま、私はまた流斗さんに連れられて歩き出した。



 やってきたのは、射的のスペースだった。
 景品がずらりと並ぶ台の前に立ち、流斗さんは迷いなく銃を構える。

 ……格好いい。

 その姿に見惚れてしまった。

 真剣な横顔は、どこか色っぽくて。
 でも、そう思っているのは私だけじゃなかった。
 周囲の女子たちの視線が、次々と彼に向けられていく。

 みんな、キラキラした目で見つめてる……。
 なんだか、ちょっとジェラシー。

 って、私にそんな資格なんてないのに。

 ひとりで反省していると、ふいに優しい声がふってきた。

「どれがいいですか?」

 銃を構えたまま、流斗さんが私の方をちらりと見る。
 その視線にも、ちょっとドキリ。

「え? えーっと……。あ、あのウサギのぬいぐるみがいいです」

 慌てて景品を見渡し、目に入ったぬいぐるみを指差した。

「了解」

 流斗さんは静かに構えを定め、狙いをつける。

 周りからは緊張した空気が伝わってきた。
 先ほどまで賑やかだったはずの周囲が、いつの間にか静まり返っている。

 みんなの視線が、流斗さんの手元に集まる。

 ポンッ。

 軽い音とともに、スポンジ弾が飛び出した。

 弾がウサギのぬいぐるみに命中する。
 一拍遅れて、ぬいぐるみはゆっくりと台から落ちていった。

「やったー、すごい、流斗さん!」

 私が声を上げると、流斗さんは照れたように笑った。
 その笑顔が可愛くて、頬が少し熱くなる。