義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 私が戸惑っていると、
 流斗さんはすぐに振り返って、いつもの柔らかな笑顔を浮かべた。

「すみません。ちょっと……あまりに唯さんが可愛くて、自制しておりました」

「えっ?」

 言ってる意味がわからない。

「じゃあ、僕が買ってきます。唯さんは、あそこの席で待っていてください」

 指さされた先には、模擬店用に用意されたテーブル席がいくつか並んでいる。
 混んではいるけど、空席もちらほら見える。

「わかりました。じゃあ席、取っておきますね」

 流斗さんを見送ったあと、私は空いている席へと向かった。



 ほんと、みんな楽しそう……。
 行き交う人たちの笑顔を見ていると、こっちまで嬉しくなる。

 私は席に腰掛け、ぼーっと人並みに目を向けていた。

 それにしても、カップルが多い?
 私と流斗さんも、あんなふうに見られてたのかな。

 がやがやとしたお祭りムードに酔いしれていると――
 人混みの向こうから、流斗さんがこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。
 私は手を振って合図した。

「お待たせしました」

 流斗さんは微笑みながらトレーをテーブルに置いた。
 目の前に並んだのは、たこ焼きとわたあめ。お願いした通りだ。
 つい目が輝いてしまう。

 そのまま向かいに腰を下ろすと、流斗さんはなぜかじっとこちらを見つめてきた。
 視線の意味がわからず、問いかける。

「ありがとうございます。あの……何か?」

 流斗さんは一瞬口を開きかけ――けれど、子どもみたいに照れた笑顔で誤魔化した。

「ううん、さ、食べましょう」

 なんだろう。さっきから流斗さん、謎の行動がおおいな。
 それに、彼のテンションがいつもより高いような……?

 まさかね、あの流斗さんだよ。浮かれるなんてこと。