義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 ステージを見終わった私たちは、またあてもなく歩き出す。

「はぁ~、素敵だったぁ……」

 ぽつりとこぼしたとたん、ぐぅ、と私のお腹が鳴った。

「ははっ、可愛い音ですね」

「わ、笑わないでください!」

 顔が熱くなって、俯いてしまう。
 そういえば、朝から準備や接客でバタバタしていて、食事をとる暇がなかった。

 お腹を抱える私に、流斗さんが困ったような笑みを向ける。

「気がつかなくてすみません。唯さん、すごく頑張ってましたもんね」

「……え、まあ。いえ、そんな」

 こっぱずかしいあの服装が脳裏に浮かんで、私は苦笑いを浮かべる。
 でも、頑張りを認められるのは、やっぱりちょっと嬉しい。

 流斗さんがにこっと笑って、私の手を取った。

「模擬店、行きましょう。なにか美味しいものを見つけに」

 その笑顔につられて、思わず笑みがこぼれる。

 でも――
 兄のことが、ふと頭をよぎる。

 いま、この時間は幸せなはずなのに。
 ……どうして、こんなに心がざわつくんだろう。