義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 校舎の中も外も、どこを歩いても華やかだった。
 通路の奥から音楽が聞こえてきたり、香ばしい匂いがふわっと漂ってきたり――。
 まるでお祭りの町みたいで、あちこちに人の笑顔と賑やかな声があふれている。

 流斗さんに手を引かれるまま、私はいろんな場所を巡った。

 まず最初に挑戦したのは、通りすがりの輪投げ。
 私は一投目から全滅だったけど、流斗さんはあっさり全ての輪を通してしまった。

「さすがですね……」

「いやあ、たまたまですよ」

 照れたように笑って、景品のキャラメルを差し出してくれる。
 包みを開けて口に入れると、甘くて、ほろっと優しい味がした。

 ふたりで顔を見合わせて笑う。

 なんだか、少しくすぐったい。



 そのあと、隣のクラスで見つけたクレーンゲームにも挑戦。

 私は空振りばかりだったけど、流斗さんは迷いのない手つきでアームを操り、まるで簡単そうに箱を取ってしまった。

「これ、なんでしょうね?」

 首を傾げた流斗さんが箱を開け、中を確かめる。

「あ、可愛い……」

 ピンクの花柄の写真フレームを、彼はそっと私に差し出してくれた。

「どうぞ。唯さんに似合いそうです」

 それを素直に受け取る。
 ……照れる。けど、すごく嬉しい。

「ありがとうございます」

 私が笑うと、流斗さんも嬉しそうに笑った。