義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


「メイドさん、可愛いね。僕たちの相手してくれる?」

 突然、見知らぬ男子生徒たちに声をかけられた。
 三年生かな? 二人組の男は、にやにやと私を見てくる。

 ……なんか、嫌な感じ。

「えーっと、ご注文は?」

 笑顔を崩さないようにしながら問いかける。

「は? 注文したら、俺たちと付き合ってくれるの?」

「いえ……そのようなサービスはありません」

「えー、いいじゃん、ちょっとくらい」

 男の手が私に伸びてきて――

「やめてもらえますか?」

 背後から伸びてきた手が、男の腕を掴んだ。

 振り返ると、すぐ傍に流斗さん。
 ものすごく不機嫌そうな顔で立っていた。
 いつもの穏やかな彼からは想像できない、鋭い視線。

 空気が一瞬で凍りつく。

「げっ、木村さん。あ、もしかしてこの子……」

 男子生徒たちが私と流斗さんを交互に見て、青ざめる。

「この子は、僕の彼女だけど。何か?」

 視線も声も、怒りがはっきりとにじんでいた。

「す、すみません、まさかそうとは……なあ?」
「は、はい! 全然知りませんでした! すみませんでしたっ」

 一人が慌てて逃げ出し、
 もう一人も深々と頭を下げ、あとを追うように教室を飛び出していく。

 私はその背中を呆然と見送った。

 ……な、なに今の。