学園祭が本格的に始まり、私たちの“喫茶店”もにぎわいを見せ始めた。
 お客さんが次々とやってきて、店内は一気に華やぐ。

 私は最初、流斗さんのテーブルを担当していたけれど――
 混み始めると、他の席にも呼ばれ、あちこち走り回る羽目に。

 なぜかやたらと指名が入って、もうずっと走りっぱなしだ。

「もう一杯、お替りくれる?」

 男子生徒がにこやかに笑いながら注文してくる。

「はい、喜んで」

 私は何度目かわからない笑顔を浮かべた。
 さすがに、ちょっと疲れてきたかも……。

 ちらりと視線を向ける。
 流斗さんは相変わらず席に座ったまま、じっと私を見ていた。

 ……視線が刺さる。
 本当は、私が相手をしなきゃいけないのに。
 待たせてばかりで申し訳ないよ~。せっかく来てくれたのに。