「ほらー! だったら、この際ちゃんと確かめてみたら?
 咲夜さんに自分の気持ち、伝えてみなよ」

 蘭にそう言われて、脳裏に流斗さんのやさしい笑顔が浮かぶ。

「でも、私は今、流斗さんと……」

「あー、まあねぇ、それがあるわね。
 でもさ、流斗さんも唯の気持ち知ってたんでしょ?」

 私は小さく頷いた。

「うん、それでもいいって……言ってくれた」

 それを聞いた蘭は、頷きながらも少し真剣な口調になる。

「それなのに、傷つけるのが怖いからって黙ってるの?
 それって優しさじゃないよ。むしろ、よっぽど残酷」

 その言葉が胸に突き刺さった。

 わかってた。心の奥でずっと思ってた。
 でも、そのことに気づかないふりをしてきた。

 お兄ちゃんをあきらめるために、流斗さんを好きになろうと努力した。

 そんな気持ちを、流斗さんは全部わかっていて――それでもそばにいて支えてくれた。
 そんな優しい人を、私は利用していた。

 ――最低だ。

 自分が許せない。胸が痛い。悔しい。

 目頭が熱くなって、涙が滲んだ。

「唯……もう、自分に嘘をつくのやめなよ。
 そのままじゃ、誰も幸せになれないよ」

 蘭は私を優しく抱きしめてくれる。
 親友のあたたかな温もりと優しさに、さらに涙が溢れてきた。

「うん……」

 私は蘭の腕の中で、力強く頷いた。

 決めた。

 流斗さんに、本当のことを言おう。
 そして、お兄ちゃんに、気持ちを伝えよう。