私は誤魔化すように微笑んだ。

「うん。うまくいってるよ。流斗さんは優しいし、格好いいし……最高の彼氏だよ」

 けれど、兄の目を正面から見ることはできなかった。

「唯、俺は――」

 低く、決意を帯びた声。
 兄がすっと身を乗り出した、その瞬間。

 ぐらりと視界が揺れる。
 息を呑んだそのとき、兄の体が私の上に覆いかぶさってきた。

 え……これって、押し倒されてる?

 理解した途端、胸の鼓動が暴れるように跳ね上がる。

「っ……お、おにい……ちゃん?」

 至近距離の顔。吐息がふわりとかかる。
 驚いたように目を見開いたあと、兄の瞳がふっと熱を帯びて揺れた。

 何も言えないまま、その瞳を見つめ返す。

 どうしていいのか、わからない。
 でも、目を逸らすこともできなかった。

 鼓動が速まる。
 ……これはヤバいかもしれない。
 このままじゃ、また変身しそう。

 私は、必死に気持ちを落ち着けようとした。