「唯、どうした?」

 兄が心配そうに覗き込んでくる。

「ううん、何でもないよ」

 なんとか微笑んでみせると、兄もまた優しく笑い返した。
 ――けれど、次の瞬間。

 その笑みがふっとかげる。

「なぁ、唯。おまえ……本当に、流斗のこと好きなんだよな? うまくいってるのかよ」

 ドクン、と心臓が跳ねた。

 核心を突く問い。
 お兄ちゃんにだけは聞かれたくない。

 だって、本当に好きなのは……

 本当の気持ちなんて、言えない。
 言えるはずがない。