「ごちそうさまでした」

「おう! おいしかったな」

 兄の満面の笑みに、またときめく……。
 我ながらあきれるよ。


 食べ終わると、私はいそいそと皿を洗い始める。
 兄はその間にお風呂へ向かった。

 本当に美味しかった。
 どこをとっても私好み。兄は私の舌の好みを完璧に把握している。

 小さく、はぁと息がもれる。

 ほんと、困るんだよなあ。
 どんどん兄に染まっていく自分が、情けなく思える。
 まるでお兄ちゃんなしでは生きていけないみたいで――そんなの、絶対ダメなのに。

 ふと、将来のことが頭をよぎる。
 もし兄が誰かと結婚して、別々に暮らすことになったら……。

 ぶん、と首を横に振った。

 余計なことは考えない。考えたくない。

 私は無心で、皿を洗い続けた。



 兄がお風呂から上がり、ほどなくして私も入浴を終える。
 湯上がりのついでにキッチンに寄って、ホットミルクを片手にリビングへ向かった。

 ソファでくつろぐ兄の隣に座ろうとして、ふと足が止まる。

 ……どこに座ればいい?

 今まで気にしたことなんてなかったのに、今日はやけに緊張する。
 最近のあれこれや、今日の出来事のせい?
 兄のことを意識してしまって、落ち着かない。

 さりげなく、少しだけ間を空けて座った。

 兄はテレビを見ていて、隣に座っても特に気にする様子はない。
 私のことなんて、それほど気にしてないのかな……。

 そう思ったら、少し寂しくなった。

 ほんと、私って勝手だよなあ。