兄は私を守るように、そっと、けれど確かに抱き寄せてくれる。

 どういうつもり?
 そんなふうに優しくしないで。
 なんで、そんなことするの……。

 動悸に抗いながら、必死に考えようとする。
 けれど、思考はまとまらない。

 ドッドッドッ――

 胸の奥で、激しく脈打つ鼓動。
 そして、最後に大きな波が押し寄せた。

「……っ」

 やがて、鼓動は少しずつ静かになっていく。

「……唯」

 兄が、私の名をそっと呼んだ。
 その響きが胸の奥をかすめ、熱を残していく。

 次の瞬間、兄の腕に力がこもる。
 ぎゅっと抱きしめられた。

 そのぬくもりに包まれながら、私はようやく感覚を取り戻していく。

 ふと気づけば、兄の顔がすぐ傍にあった。
 それだけで心臓が壊れそうな音を立てる。

 しかも、抱きしめられている感触が、はっきりと――

「お、お兄ちゃんっ……」

 恥ずかしくなって体をよじると、兄がはっとしたように顔を上げ、私を離した。