義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 そして、とうとうその時がやってきた。

 これが、体育祭最後の種目。

 私の視線の先には、出番を待つ兄と流斗さんの姿があった。
 すぐに二人が呼ばれ、それぞれのレーンへと向かっていく。

 今日はやけに同じ種目に出ることが多い気がするけど……気のせい?

 一緒に出られると、どっちを応援したらいいか迷うからやめてほしい。

 ……いや、ここは流斗さんだよね。
 彼氏だし、さっきも助けてくれたし。当然だよ、うん。

 そう思うんだけど、気づけば視線は兄を追っていた。

 二人は隣り合いながらも、互いの顔を見ることはない。
 ただ、まっすぐ前を見据えている。

 静かな気合が伝わってきた。

 張り詰めた空気。今日はずっとこんな感じ……なぜ?

 そして、係の合図に合わせて二人がスタートラインに立った。

「よーい……」

 全員が構える。

 ――パンッ!

 スタートの合図と同時に、二人は勢いよく飛び出した。

 見る見るうちに、他の選手を引き離していく。
 完全に二人の独走状態だ。

「は、速っ……!」

 隣で蘭が感心したように声を漏らした。

 私も唖然とする。
 運動神経がいいとは知っていたけど……めちゃくちゃ速い。

 風を切るような速さだ。
 目を離すことも、瞬くことさえも忘れていた。

「頑張れ……頑張って」

 無意識に、小さくこぼれ落ちる。

 まただ。今、どっちを応援してるんだろう。
 心の中で問いかけてみるけど――やっぱり、わからなかった。

 ……きっと、どっちもだよ。そう、きっとそう。