『これより、三年生による男子二百メートル走がまもなく開催されます。
出場選手の方はすぐに指定の場所に集まってください。繰り返します……』
タイミングよく、アナウンスが響いた。
「あっ、ほら、咲夜と流斗さんの出る競技だよね。応援行かなきゃ!」
確かふたりが出場すると聞いていた。
これぞ、天の助け。
私は立ち上がり、ほっと胸をなでおろす。
このままでは、蘭に告白される勢いだった。
それは困る。
彼女を振るなんて、私にはできない。
「あら……。そう、だったかな」
蘭は視線を落とし、指先でスカートの裾をいじる。
そして、名残惜しそうに私を見つめた。
「優くん、いろいろお話できて楽しかった。また今度ゆっくり話そうね?」
圧の強い視線をもろに受け、ぐっと詰まる。
「う、うん。そうだね、また今度。……急がないと、始まっちゃうよ」
視線に耐えきれず、私はそそくさと歩き出す。
後ろからは、少し遅れて蘭の足音がついてきた。
ふう、なんとか今日は乗り切った。
でもまた同じことが起きたら……蘭はきっと。
ああ! 今は考えるな。
とにかく、ふたりの応援に集中するんだ。
頭を軽く振って、雑念だらけの思考を振り払った。
