義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


「ねえ、優くんの好きなタイプって、どんな人?」

 ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、蘭が恥ずかしそうに問いかけてくる。
 頬をほんのり染め、上目遣いでこちらを見つめるその仕草には、どこか艶っぽさすら感じられた。

 ……なんというか、あざとい。けど、自然だからこそ厄介だ。
 こんなふうに見つめられて、やられない男なんているんだろうか。

 先ほどから、周囲の視線がやけに痛かった。
 男子生徒たちの視線が、じりじりと突き刺さってくる。
 きっと蘭に想いを寄せている連中だろう。
 私が蘭と親しく話しているのが気に入らないのだ。

 そんな睨まれても、どうすることもできないんだけどね……。

「うーん。優しくて、料理上手な子?」

 私は適当に答えてみた。
 最後の条件は、自分の好みも入っている。

「へえ、そうなんだ。じゃあ……綺麗系と可愛系、どっちが好み?」

 質問の意図を察した私は、そっと蘭の顔をうかがった。
 期待のこもった眼差しが突き刺さる。

 彼女は、どう見ても綺麗系だ。

 ここは、「綺麗系」と言うべきなのかもしれない。
 でも、変に期待を持たせてしまうのも……。
 だって、どうせ気持ちには応えられないし。

 ああ、困った、どうしよう。
 どう答えればいいのか分からず、ぎこちない笑みでごまかした。