義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 ――無意識だった。
 気づいたときには、手が頬を叩いていた。

 掌に、じんと熱い痛みが広がる。
 我に返り、口を開いた。

「ご、ごめんなさい……!
 でも、人の家族のことをとやかく言うのは、どうかと思います。
 ましてや、真実かどうかもわからない噂を。
 本当でも嘘でも、それを安易に広め笑うなんて……私は許せません」

 まっすぐ加奈さんを見つめる。

 彼女は頬を押さえたまま、信じられないといった表情で私を睨みつけた。
 その目に、怒りの炎が宿る。

 次の瞬間――

 パンッ!!

 さっきよりも大きな音が、空気を鋭く裂いた。
 加奈さんの手が、私の頬をはじく。

 熱と痺れが同時に広がり、頬がじんじんと燃えるように熱を持った。

「何よ、あんた! いい子ぶって……ほんっとむかつく!」

 怒鳴りながら、加奈さんが私に掴みかかろうとした――そのとき。