体育祭も半分を過ぎ、昼休憩に入った。
生徒たちはそれぞれお弁当を広げ、思い思いの場所でくつろいでいる。
私も蘭を誘って、木陰のベンチに腰を下ろした。
うちの学校の体育祭では保護者の参加は禁止されている。
だから昼休みには、友達同士や恋人同士のペアが自然とできあがっていた。
「あ、いたいた。唯さん、僕もご一緒していいですか?」
その声に顔を上げると、笑顔の流斗さんがこちらへ駆け寄ってくる。
どうやら、私たちを探してくれていたらしい。
「流斗さん! もちろん。ね、蘭?」
蘭へ顔を向けると、彼女は急に取り繕ったように微笑む。
「は、はいっ! どうぞどうぞ! あ、私、邪魔でしたら別のところに……」
「いえいえ、そんな。私がお二人の邪魔をしてしまうんですから」
にっこりと笑う流斗さんに、蘭は急にしとやかモードへと切り替わった。
座り方まで直して、さっきまで胡坐みたいだったのに、今は膝を揃えて女の子座り。
……わかりやすいなあ。
思わず小さく笑って、それからみんなでお弁当を広げた。
ふと、何気なく視線を走らせる。
気づけば、兄の姿を探していた。
そんな私の動きに気づいたのか、流斗さんがぽつりと告げる。
「咲夜なら、加奈さんと一緒ですよ」
「え……あ、そうなんですね。べ、別に気にしてないですけど」
強がるように返したその言葉には、少し自分への戒めも込めていた。
――いけない。また、兄のことを考えてる。
流斗さんの前で、それは失礼だってわかってるのに。
それでも心が勝手に反応して、目は兄を探してしまう。
はあ、情けない……。
「さ、食べましょ」
空元気を装って笑う私に、流斗さんも優しく微笑み返してくれた。
