私は慌てて、綱引きの競技エリアへと向かった。
すでに準備は整っていて、生徒たちはそれぞれの持ち場につきはじめていた。
その中に、すぐに見つけた。
対峙するように立っている二人の姿。
お兄ちゃんと流斗さん!
クラス対抗の綱引き。
応援席からの声援が飛び交い、グラウンドの空気が一気に熱を帯びていく。
綱を握る十人の中でも、彼らの存在感は際立っていた。
見た目もさることながら、体から放たれるオーラが他の生徒とはまるで違う。
まるで……決戦前夜のような、静かな熱が漂っていた。
「なんだか二人とも、すごい気合入ってるね」
隣で蘭がキラキラと目を輝かせて言う。
でも私は、正直、気が気じゃなかった。
どうしよう……。
まさか、さっきの出来事が二人の仲をぎくしゃくさせた、なんてことはないよね?
ハラハラしながら、二人を見守る。
いったい、どっちを応援すればいいの?
どっちも選べないよ~。
そんな私の迷いなんてお構いなしに、スタートの笛がグラウンドに鳴り響いた。
