義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


「な、なんで……?」

 スタートラインに並ぶ二人を見た瞬間、私は呆然と立ち尽くした。

 なんで、よりにもよって――
 お兄ちゃんと流斗さんが、並んでるのよ!?

 どっちを応援すればいいか、わからないじゃない!

 一人で苦悩していると、隣で蘭がぽつりとつぶやいた。

「あちゃー、これは波乱の予感しかしないわね」

 ほんと……あの二人か。
 いったいどっちが勝つんだろう。気になる。

 私たちの不安をよそに、周囲は異様なほど盛り上がっていた。

 それもそのはず。
 お兄ちゃんも流斗さんも、女生徒たちからかなり人気がある。
 いや、男子からもあるか。

 とにもかくにも、
 黄色い歓声があちこちから飛んでいて、まるでアイドルみたい。

「よーい……」

 ライン際に立った生徒が、スタートガンを構える。

 ――パンッ!

 乾いた音が鳴り響いた瞬間、二人はものすごい勢いで飛び出した。
 他の選手たちを引き離して、あっという間に先頭に躍り出る。

 さすが……格好いい。
 なんて見惚れているうちに、二人は借り物カードの台に到着した。

 同時に紙を引き、すぐに目を通すと、あたりに視線を走らせる。

 どうやら何かを探しているらしい。
 そりゃそうか、借り物競争だもんね……って、あれ?

 流斗さんの視線が、ピタリと私で止まった。

 そのまま、一直線に駆けてくる。
 風を切って迫るその姿に、目を見開いた。