義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 体育祭は予定どおり進行していった。

 私は自分の出場競技に全力集中!

 障害物競走、玉入れ、二人三脚――
 どれも一生懸命に取り組んでいたら、あっという間に出番が終わっていた。

 汗ばんだ額をぬぐい、小さく息をつく。
 うん、頑張ったと思う。

 ひとまず、ほっと一息。

 これからは応援に回ればいい。そう思うと、少し気が楽になった。

 私は運動が得意というわけじゃないから、結果はまあまあってところ。
 目立った活躍はなかったけど、精一杯やったし、十分満足。

 よし、自分に花丸をあげよう。

 ――でも、蘭はやっぱりさすがだった。

「お疲れ!」

 笑顔で戻ってきた蘭は、どの競技でも堂々の一位。

「お疲れ、大活躍おめでとう」

「ありがと。まあ私が本気出せば、こんなもんよ!」

 ふふんっと鼻を鳴らし、得意げに胸を張る蘭は、ちょっと可愛い。

「じゃあ次は、借り物競争だね。流斗さんが出るし、応援に行かなきゃ!」

 蘭が私の腕を引っ張って、意気揚々と歩き出す。
 その姿につられて、自然と頬が緩んだ。


 私はこのとき、ただ純粋に彼を応援するつもりだった。

 ――けれど、この裏で兄と流斗さんの静かな“勝負”が始まろうとしていることなど、知るよしもなかった。