「……わかったよ」
流斗が鋭い視線を向け、言い放つ。
「君がそのままの態度でいるのなら、俺は絶対に唯さんを譲らない。
――勝負だ。中途半端に立ち止まっていることが、どれだけ彼女を傷つけているか。
負けた方は、きっぱりあきらめる。
その方が君もいいだろう? ずっと中途半端でいるより……」
迷いのないその眼差しに、息をのむ。
そう、だな。
これは、想いを断ち切るきっかけになるかもしれない。
このまま何も起きなければ、きっと俺はずっと唯のことを……。
小さく、でもしっかりと頷いた。
「……いいだろう。勝負だ。負けた方が唯をあきらめる」
「本気でやれよ」
「ああ」
流斗は無言で踵を返し、教室を出て行った。
静まり返った教室に一人残され、小さくため息をつく。
「……ほんと、お人よしだよな」
苦笑して、軽く地面を蹴る。
流斗は優しい男だ。
きっと、俺のことも唯のことも、ちゃんと見ている。
三人がこのまま曖昧な状態でいることを、誰よりも苦しんでいたのは――あいつかもしれない。
だから、俺を追い詰めた。
逃げられないように、けしかけてきたんだ。
正直、流斗になら唯を任せてもいい。
そう思えるほど、あいつはいい男だし、信頼している。
でも、それでも……あきらめきれない自分がいる。
俺の最大の足かせ。
――父親の罪。
全部、流斗には見抜かれていた。
だからこそ、俺は応えなきゃいけない。
流斗の覚悟に、真正面から向き合うために。
俺は決めた。
この勝負、本気でやる。
それで、もし勝ったら――
そのときこそ、唯に伝えるんだ。
俺の本当の気持ちを。
