唯の父親は、本当に素晴らしい人格者だ。
 どこまでも優しく、心は海のように広い。

 もちろん俺も、そんな唯の父を尊敬するようになるまでに時間はかからなかった。

 一緒に暮らすようになって、その人柄を知れば知るほど、自然と慕うようになった。

 だが――
 唯のことを好きになればなるほど、罪悪感が大きくなっていった。

 俺は、唯の母親を奪った男の息子だ。

 唯は、その事実をまだ知らない。
 俺は母から聞かされていたが、「この罪は、私たちが背負っていかなければならない」と口止めされていた。

 もちろん、俺はこの十字架を一生背負って生きていくつもりだ。

 でも……もし唯が知ったら、どう思うだろう。
 今までどおり接してくれるだろうか、それとも俺を憎むだろうか。

 その恐怖に、ずっと怯えている。

 夜、夢に見ることさえある。
 事実を知った唯が、憎しみのこもった目で俺を睨む。
 目が覚めると、全身が汗でびっしょり濡れていた。

 そのたびに、罪の意識に苛まれる。

 こんな日がいつか本当に来てしまうんじゃないかと、ずっと怯えていた。

 ……こんな俺が、唯のことを好きだなんて――言えるか?
 許されるのか?