「図星なんだね。
 ああ、そうさ。僕にはわからないよ、君の気持ちは。
 でも一つだけ言える。僕は、唯さんを苦しめるようなことはしない。
 彼女が幸せになる道を選ぶ。それだけだよ」

 その目を見れば、嫌でもわかる。

 本気だ。
 こいつは本気で、唯のことを――。

 ……そうだ、俺は怖かったんだ。
 唯に拒絶されるのが。

 もちろん、「兄妹」という関係もある。
 ずっとそうやって育ってきたのに、兄から突然想いを告げられたら、気持ち悪いと思われるかもしれない。
 そう思って、ずっと抑えてきた。

 でも、いつからか、唯も俺のことを……そう思うようになった。
 あいつの反応が、そう感じさせたから。

 本当は、すぐにでも伝えたかった。
 世間の目なんてどうでもよかった。
 唯を手に入れられるなら、それだけでよかったんだ。

 だけど、俺にはどうしても伝えられない理由がある。

 それは――まだ唯には話していない秘密。

 俺の父親は……唯の母親を、殺した。