「あいつ……いったい何なんだよ」

 小さくため息をつく。
 さっきの出来事が、頭から離れない。


 昼休み、教室でぼーっとしていた俺の机が、突然ドンッと叩かれた。

「な、なんだよ?」

 驚いて顔を上げると、流斗が鋭い目で俺を睨んでいた。

「ちょっと話がある。ついてきて」

 有無を言わせぬその口調に、思わず頷いてしまう。

 こんな流斗は初めてだった。
 ものすごい気迫をまとっていて、何かを決意したような顔をしている。

 連れて行かれた先は、今は使われていない空き教室。
 静まり返った教室の中で、俺たちは向かい合った。

 流斗がじっと俺を見据え、不敵に笑う。

「ねえ、僕と勝負しない?」

「は? なんだよ、いきなり……」

 意味がわからなかった。
 突然、何の勝負だって言うんだ?

「もうすぐ体育祭があるだろ? 三本勝負にしよう。二本取った方が勝ちだ」

「おい、勝手に話を進めんなよ。……そもそも、俺とおまえが勝負してどうすんだよ?」

 問い返しても、流斗は淡々と話を続ける。