「ねえ、唯。今日うち来ない?」
休み時間、突然蘭から誘われた。
「え? 急にどうしたの?」
「別に。たださ、たまには二人で女子会しよっ」
顔を近づけてウインクしてくる蘭。
……落ち込んでるの、気づかれてるのかな。
じっと見つめていると、蘭は私の腕を取って、おねだりするように揺らした。
「ねぇ、いいでしょ? 恋バナしよ、恋バナ!
女の子の特権だよ、楽しいし。あ、今日はうちに泊まっていきなよ。うん、決まり!」
どんどんテンションを上げ、勝手に予定を決めていく。
「は? ちょ、勝手に……」
戸惑う私に、蘭は目を細めて鋭い視線を向けてきた。
「なに、それ。ダメなの?」
不機嫌そうな顔に、私は押し黙るしかない。
綺麗な顔って、怒ると迫力がある。
「いや……ダメじゃ、ないけど」
「じゃあ決まり。お泊りの用意できたら、うちに来て」
強引に指切りされ、反論する隙もなかった。
……まあ、いいか。
一人で悩んでいても、気持ちが沈むばかりだし。
今は、誰かといたい。
それなら蘭が一番いい。
彼女とは気心が知れてるし、その明るさが、きっと私を引っ張り上げてくれる。
それに、そろそろ彼女にも気持ちを打ち明けたいと思っていた。
だから――いい機会なのかもしれない。
兄への想いを、もう一人で抱えていられそうにないから。
学校から帰った私は、母に事情を話した。
「あら、いいじゃない。お泊まり。
学生ってそういう楽しみがあっていいわねえ。
親友と夜通し語り合えるなんて、素敵じゃない。どうぞ楽しんできて」
母はにこにこと頷いてくれた。
父ももちろん快く承諾してくれる。
兄は、今日も加奈さんと出かけているようで家にはいなかった。
母に兄への言付けを頼み、私はお泊まりの準備を済ませて家を出た。
