ごちゃごちゃと考え込んでいるうちに、歩みは自然と進んでいき。
気づけば、玄関先に立っていた。
……いつの間に。
「優くん」
「へ?」
名前を呼ばれて、反射的に振り向く。
次の瞬間、流斗さんの唇が、私の頬に優しく触れた。
ふわりとした柔らかな感触。
え、今のって……。
呆然と彼を見つめたそのとき――
ドサッ。
何かが落ちるような音がした。
その音の方に振り返ると、そこには……兄がいた。
目を大きく見開き、口をポカンと開けたまま私たちを見つめている。
三人とも、時が止まったかのように、その場に凍りついた。
最悪だ。よりにもよって、お兄ちゃんに見られるなんて。
「あ、さく……」
流斗さんが何か言いかけた、そのとき。
「お、おう! 今帰りか? そっか、二人で。はは、仲良いな、おまえら」
兄は目を逸らし、ぎこちなく笑いながら言葉を重ねる。
「お兄ちゃ――」
私が声をかけようとすると、兄はその声を遮るようにさらに畳みかける。
「ああ! そういうことか、おまえらうまくいったんだ?
正式に付き合うことになったんだな!
いやあ、めでたいなあ。大切な妹と親友が付き合うなんて、こんな嬉しいことあるかよ。
うん、うん。よかったな。……じゃ、イチャイチャはそのくらいにしとけよ」
兄は、明るく笑ったけれど、どこか無理をしているように見えた。
そのまま私たちを置いて、家の中へ駆け込んでいく。
その横顔が、どこか痛々しく映ったのは――気のせい?
胸が、ズキンと締めつけられる。
