さっき優に変身してしまった私は、店内のトイレでこっそり着替えを済ませた。
いつも持ち歩いている大きめのバッグには、優用の制服が忍ばせてある。
父と兄のアイデアだけれど、こうして困ったときには本当に助かる。
……二人には、ほんと感謝だよ。
着替え終えて外に出ると、流斗さんがいつもの笑顔で待っていてくれた。
その姿にほっとしつつ、私は彼と並んで帰路につく。
夕焼けに染まる帰り道。
人通りもまばらな住宅街を、二人の影が長く伸びていく。
しんと静まり返った道に、私たちの足音だけが響く。
気づけば、家まではもう数分というところまで来ていた。
だけど――流斗さんは、さっきからほとんど言葉を発していない。
それは私の告白のせい? それとも、優に変身してしまったから?
……よくわからない。
不安を押し隠すように、私はこっそりと横目で彼の様子をうかがった。
するとすぐに、その視線がこちらをとらえ、目が合ってしまう。
胸が跳ねる。
「どうしました?」
柔らかな笑みを浮かべながら、流斗さんが問いかけてくる。
その笑顔は、いつもと同じはずなのに、どこか特別に見えた。
「あ……えっと、なんだか静かだなって思って」
そう言うと、彼は照れたようにふっと視線を逸らした。
「そりゃあ、一応、好きな子と二人きりですからね。
僕だって緊張くらいしますよ」
思いがけない言葉に、目を丸くする。
「え? だって、今までだって二人きりなんて、いくらでもあったじゃないですか」
そう、この状況は初めてじゃない。なんで今更……?
夕日が差しているせいか、それとも本当に照れているのか。
流斗さんの頬が、ほんのりと赤く見えた。
