モヤモヤとした気持ちを引きずったまま、放課後を迎えた。
結局、楽しいはずのランチも、兄のことが気になって心ここにあらず。
流斗さんはきっと気づいている。
私の気持ちに気づきながらも、何も言わず、いつも通り接してくれている。
その優しさに甘えている私は、ほんと最低だ。
うう……情けない。
「唯さん、大丈夫ですか?」
ふと顔を覗き込まれ、我に返る。
落ち込んでいた顔を見られてしまった。
夕暮れの通学路。肩を並べ、ゆっくり歩く。
今隣にいるのは流斗さんだけ――いつも当たり前のように隣にいた兄の姿はない。
まだ兄は私を避けている。
帰り支度をしている私のところへ迎えに来たのも、今日は流斗さんひとり。
彼によると、兄は『加奈と約束があるから先に帰る』と言っていたらしい。
でも、それって……どう考えても口実だよね。
今までそんなこと一度もなかったのに。
ふたりきりにしてあげようって気遣いなんだろうけど、こんな露骨にしなくてもいいのに。
そんなふうに考えていると、流斗さんが声をかけてきた。
「そうだ。これから放課後デートしませんか?
何か美味しいものでも食べましょう。僕が奢ります」
突然の嬉しいお誘いに、胸がときめく。
「いいんですか? じゃあ、お言葉に甘えて」
私が笑うと、流斗さんも嬉しそうに笑った。
そうだ。
どうして兄のことばかり考えているんだろう。
目の前にいるのは流斗さんなのに。
ちゃんと向き合うって、決めたばかりじゃない。
――しっかりしなきゃ。
私は兄への想いを胸の奥にそっとしまい、流斗さんとの今を大切にしていこうと、強く心に誓った。
