次の日から、兄の態度が変わった。
私と流斗さんを応援する――その言葉どおりに。
朝の登校時。
兄とふたりで歩いている間はいつもと変わらない様子だったのに、流斗さんが合流した途端――
「わりい、俺ちょっと急ぐわ」
それだけ言うと、兄は学校へ駆けていった。
あまりにも不自然な態度だった。
これまで、どんなに私が嫌がっても、絶対に離れようとしなかったのに。
胸に棘が突き刺さるような痛みが走り、あとから重たいもやもやが広がっていく。
……でも、それ以上に今は彼のことが気がかりだった。
そっと横顔をうかがうと、流斗さんは変わらない笑顔を浮かべている。
その穏やかさに触れるたび、新しいもやもやが渦を巻く。
あの告白に、まだきちんと返事をしていない。
彼はきっと、待っていてくれるのに。
なるべく早く伝えなきゃと思うのに……言葉が出てこない。
ふたりきりになると、なんとなく気まずくてうまく話せなかった。
それでも流斗さんは、急かすこともせず、いつもと同じ優しい笑顔を向けてくれていた。
昼休みになっても、兄は姿を見せなかった。
代わりに教室の扉から顔を覗かせたのは、流斗さんだった。
「唯さん」
笑顔で手を振る彼に驚き、駆け寄る。
「迎えに来てくれたんですか?」
「うん。屋上に行こう」
私は周囲をキョロキョロと見まわした。
「咲夜なら、来ないよ」
その言葉に、胸がちくりと痛む。
「……そうですか」
いつも、まっさきに私のところへ来るのに。
兄の様子は、やっぱりいつもと違う。
昨日「応援する」なんて言ってたから、そういうつもりなんだろうけど……。
でも、こんなにあからさまにしなくてもいいのに。
「唯さん?」
流斗さんが心配そうに私を見つめる。
「あ、ごめんなさい。……行きましょう」
慌てて笑顔を作り、歩き出す。
背後から、彼が静かに続く気配がした。
いけない。
流斗さんに変に思われちゃう。
兄がいないことを寂しく思っているなんて、絶対に悟られちゃいけない。
せっかく彼が隣にいてくれるのに――。
