とうとう、ふたりきりになってしまった。

 兄の横顔をそっと見つめる。
 さっきまでとは違い、少し機嫌が良さそうに見えた。

 ふいに視線がこちらに向く。

「なんだよ。そんなに俺の顔が好きなのか?」

 また、からかうように減らず口を叩く。

「はいはい、言ってなさい」

 苦笑しながら返すと、兄がぽつりと漏らした。

「なあ……観覧車の中で、流斗とどんな話してたんだ?」

「え、どんなって……」

 言葉が詰まる。
 流斗さんに告白された、なんて言えるはずない。

 ……言えない?
 言ってもいいのかもしれない。

 兄がどんな反応するのか、見てみたくなった。

「もしかして、告白されたのか」

「え! なんでっ」

 核心を突かれ、心臓が一瞬止まった。
 なんでわかるの?

 表情で察したのか、兄は顔をしかめてつぶやいた。

「あんにゃろ……やっぱりな」

 その言葉に、引っかかる。

「やっぱりってどういうこと?
 お兄ちゃん、流斗さんの気持ち知ってたの?」

 問い詰めると、兄は困ったように眉をひそめ、視線をそらす。

「ああ、まあ、なんとなく」

「そう……なんだ」

 私だけが気づいていなかったなんて……。
 やっぱり流斗さんに悪いことをしてたんだと、改めて思い知らされた。