義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 あれから、加奈さんは元気いっぱいだった。
 まるで遊園地を全力で満喫している子どものように。

 私たちは、そんな彼女についていくだけで精一杯。

 ついに兄と流斗さんは途中でギブアップしてしまい、最後まで加奈さんに付き合ったのは、私ひとりだった。

 これ……誰のためのデートなんだろう。

 ここへやってきた本来の目的がよくわからなくなってきた。
 私も唯から優になってるしね。

「もうそろそろ、帰りましょうか」

 加奈さんがそう言ったとき、どれほどホッとしたか。
 ……って、こんなこと言ったら失礼かな。

 でも、兄も流斗さんも、どこかほっとした表情をしている。

 うん、さすがに私も疲れた。


 地元の駅に着いた私たちは、それぞれの帰路へと向かう。

 加奈さんは私たちとは逆方向。ここでお別れになる。

 名残惜しそうに兄を見つめる加奈さん。
 送ってくれないの? と視線が訴えていた。

 けれど兄は気づいているのかいないのか、あらぬ方向に視線を逸らしている。

「咲夜くん、みなさん、さようなら。今日は楽しかったです」

 兄の態度に不服そうだった加奈さんも、どう訴えても無駄だと悟ったのか、あっさりと手を振って笑顔で帰っていった。