教室の前につくと、中からは自己紹介をしている声が聞こえる。
「俺がドア開けたらしゃがんですぐ座れよ?」
「……うん」
どうせ、見つかって怒られるだけだよ。
__ガラガラッ…
「みんなやっほー!!!」
な、何してるの?
言われた通り素早く席に座ったあたしと対称的にみんなの前に飛び出していく山崎くん。
「山崎ぃ〜!どこ行ってたんだお前!」
「実は…猫を追いかけてて……」
山崎くんの言葉にみんなが吹き出す。
「先生、大目に見てあげなよ〜」
「そうだよ!」
「初日だぞ……ところで宮本、お前いつ戻ってきたんだ……?」
……やっぱり。
言い訳を考えていた時だった。
「ぬわっ」
山崎くんがイスの足につまずいたらしい。
「ちょっと〜!」
手足を伸ばしてうつ伏せになっている山崎くんを見て、またみんなが笑う。
「せんせー、続きやらないとHR終わっちゃいますよ!」
そのままの姿勢で言うものだから、先生も笑いを堪えられていない。
「……ふははっ……全く、何してんだ……
続きやるぞ。次の人」
……もしかして助けてくれた?
いや、思い違いか。
入学式の日、出逢った男の子。
馴れ馴れして、明るくて、初日からサボっちゃうような男の子。
この時はまだ、知らなかったね。
あたしたちにどんな未来が待っているかなんて。
