__ギィィィ


ダメ元で回した屋上のドアノブが嫌な音を立てて回った。



フェンスの向こう側の青空に手を伸ばす。



嫌な記憶しかないのに、ここに来てしまったのは、なんでだろう。





ねぇ、陽。


あたしがあのとき、一緒にいれば。



今もあたしの隣で笑ってくれてたのかな。





"______、明日菜"



落ちていくあのとき、なんて伝えたかったの?


あたしのこと、許してくれる?





「……っ……ふ…っ」


できるだけ声を出さないようにして涙を堪えた。



そろそろ、戻らないと。

出席番号は後ろの方だと思うけど、そろそろ順番が回ってきそうだ。


入学早々、目立ちたくはない。






深呼吸してみるけれど、

1度あふれた涙は中々止まらない。



上を向いて涙が零れないように瞬きする。





「屋上って気持ちいいな〜!」


突然聞こえた声。


誰……?

今は、後ろを振り向けない。

泣いていたのがバレないように、急いで涙を拭った。




あたしに……気付いてるよね?




教室、行ってくれないかなあ。


そんな願いも虚しく、気付けば隣にいたその男の子。


ぱっちりした目と薄い唇。
高身長でスタイル抜群。
それと、綺麗な色の茶髪。染めてるのかな。


「空って……どこまで続いてんのかな?」


「……へ?」


なんでここにいるのか聞かれると思っていたあたしは拍子抜けしてしまった。


ぽかんとしたわたしにまた彼は口を開く。


「名前、なんて言うの?」


「宮本……です」


「下の名前は?」


「明日菜……」


「俺は、山崎蓮(やまざきれん)」


……山崎、蓮くん。





「蓮でいいよ?俺も明日菜って呼ぶから」



出会ってすぐ呼びすてだなんて、


馴れ馴れしい人だ。



「山崎くんね」



「蓮でいいって!」

ノリが軽いというか。

それはそうと、教室に戻らないと。


「教室戻るね」


「上履き同じ色ってことは1年だよね?
一緒に行こーぜ」


「え、ちょっと」


「自己紹介はしないとだよな〜」



そう言って笑いながら自然に隣に並ぶ山崎くん。