"明日菜がどれだけ傷ついてるか分かってんの!?"




"____、明日菜"



やめて……!!!!


「……っはっ……はっ……はっ…」


あの日の夢を見た。

息が上がる。

あたしはパジャマの袖が濡れるのも気にせず涙を拭った。



____ジリリリリリ


枕元に置いた時計がアラームを鳴らす。



「起きなきゃ……」




宮本明日菜(みやもとあすな)、15歳。

今日から、高校生になる。




「明日菜、ご飯できたよ〜!」

1階から、叔母さんが呼んでいる。




両親は、あたしが小学校1年生のときに事故で亡くなった。


それからずっと、お母さんの妹である叔母さんと暮らしている。


料理上手で明るい叔母さん。

あたしを娘のように可愛がってくれているのがわかる。



「はーい、今行くねー!」


高校の制服に腕を通しながら、元気よく返事をする。


焦げ茶色のブレザーにチェックのプリーツのスカート。
リボンとネクタイは選択式でどちらでもいいから、あたしはネクタイを選んだ。



胸下まである髪の毛は、迷ってポニーテールにした。




最後に鏡を見ると、両手でほっぺをグイッと持ち上げる。


「これでよし」



上手く笑えるように。

鏡を見る度、やってしまう癖になっていた。






「じゃ、行ってきます!」


ローファーを履いて振り返ると、あたしは元気よく手を振る。


「いってらっしゃい」

叔母さんも笑顔で手を振り返してくれた。






春。

出会いの季節。



でもあたしは……



友だちなんて、いらない。