堪えたはずの涙が
零れてしまったのは、
なんでだろう……
気持ちを隠すことは、得意なはずなのに。
「わ、ゴミでも入ったかな……ちょっと洗って…」
蓮があたしの手を掴んで離さない。
「ちょっ……」
あたしの顔を見た後、蓮は静かに手を下ろした。
……しばらく黙ったまま、2人で空を見上げていた。
「……っ」
息が詰まって、涙がまたこぼれる。
堪えなきゃと思うのに、止まらない。
「ごめ……なんでもない……」
やっと声を出すと、蓮がゆっくりこちらを見る。
「お前、最近……眠れてないだろ?」
気付いてたんだ。
「……あたし…」
「ん?」
聞いたら、どんな顔をするかな。
あたしの罪を。
「殺したの……親友を…」
「殺した……?」
意味がわからない、というように蓮が繰り返す。
そりゃそうだよね。
殺しただなんて、急に言われても困るよね。
直接何かしたわけじゃない。
でも殺したも同然だと思う。
__全てを話し終えたあたしは、ため息をつく。
「それで明日菜は……自分を責めてんの?」
「あたしといなければ、あんなこと……起こらなかったと思うから…」
「その親友の最後の言葉だけどさ……」
「どうしても、思い出せなくて…」
「もしも、俺だったら……
"ごめんね、明日菜"
って言うと思う」
「……あ……」
あの日の光景が頭に浮かぶ。
あんな場所から落ちるなんて怖かったはずなのに、陽は最後に笑ってた気がする。
"ごめんね、明日菜"
「残して行きたくなかったに決まってる。
お前とずっと一緒にいたかったんだろ」
「……っく……っ」
最後まで……あたしの事を想ってくれてたんだね。
涙が止まらないから体育座りで俯いていたら、
蓮が羽織っていたパーカーをかけてくれた。
どれくらい、そうしていたんだろう。
スマホを開くと時刻は2時になろうとしていた。
「こんな時間……」
「ほんとだ、寝ようぜ……」
あたしは肩にかけられた蓮のパーカーを手に取って渡す。
「ありがとね、今日は寝れそうだよ」
「ならよかった」
そう言うと、蓮は手を振って部屋に向かって走っていった。
