_明日菜side_



……なんか、しんどい。


あたしは保健室へ向かっていた。

最近、息が苦しくなったり、吐き気がしたり、体調が悪いことが多い。


きっと、精神的にやられてるんだと思う。



保健室に続く階段を降りようとしたとき、怒鳴り声が聞こえてくる。


『ふざけないで……!明日菜がどれだけ傷ついてるか分かってんの!?』


陽……?


慌てて駆け出そうとしたけど、足は鉛みたいに重くて、思うように動かない。



『は?てか、あんた隣のクラスだよね?関係なくない?』


『関係ある。友だちだから!』


……陽。


『ちょっと……みんな見てるからこっち来なさいよ』




陽がどこかに連れて行かれちゃう。


追いかけなきゃ……



なんとか足を奮い立たせて声のした方に向かったけど、そこには誰の姿もなかった。



『……気持ち悪……っ』

急な吐き気に襲われて、その場にしゃがみ込む。


しばらくして呼吸が少し落ち着くと、そろそろ昼休みが終わる時間になっていた。



急いで立ち上がると立ちくらみがしたけど、構わず走り出す。


どこにいるの……?



教室にも、廊下にもいない。
焦りで胸が苦しくなって、自分の鼓動が耳の奥で響いていた



仕方なく、さっきまでいた場所に戻ってくる。


あとはもう……屋上くらいしか……


でも鍵かかってるもんね……


屋上……?

なんだか、嫌な予感がした。


慌てて、屋上に続く階段を登る。



__キィィィ

鍵が壊れているのか、ドアノブを回すと簡単に開いた。




『だから、うるさいってば……!』


苛立ちを含んだ声。


辺りを見回すと、柵の前に立つ陽と女の子たちの姿が見える。


陽、そう声をかけようとした。


そのとき――

押されたのか、バランスを崩したのか。

ほんの一瞬のことだった。


『……あっ』

掴んだ柵が傾いて、陽の手が空を切る。


陽の体が空に待った瞬間、目が合う。

口が動いていた。


"____、明日菜"


今、なんて__?

声が小さくて、聞き取れなかった。


____ドサッ



『……陽……?ねぇ…いやだ…やだ……』



涙で滲む視界の中、
世界がゆっくり回転する。


あたしはそのまま、意識を失った。