『……どうしたらいいんだろ』
昼休み。
屋上に続く階段で陽と話をしていた。
『明日菜……』
俯いた顔を覗き込んで、陽は真剣な瞳で言った。
『やっぱり、先生に言お』
『でも、余計にひどくなるかもしれないし……あたしは大丈夫だから』
『大丈夫なわけない!』
陽の声は震えていた。
『……明日菜が苦しんでるのに黙ってられないよ……』
涙を溜めながら、それでも真っ直ぐに言葉をぶつけてくる。
『ありがとう、陽』
あたしたちは、放課後に職員室に向かった。
『先生……あの、あたし……』
声が震える。
ちゃんと聞いてもらえるだろうか。
『明日菜、いいよ。……先生。宮本さんが、クラスで無視されたり、持ち物を壊されたりしてて……』
担任の先生は、パソコンの画面から目を離さないまま、めんどくさそうに言った。
『証拠、あるの?』
『それ、は……』
『中学生なんてそんなものよ。あまり大げさにしても、あなたが困ることでしょ?』
……よくあることだと笑いながら言う先生。
あたしは悟った。
守ってくれないんだ。
話を聞いてもくれないんだ。
帰り道、陽が小さな声で呟いた。
『……ごめんね、明日菜』
『陽……ありがとね。あたしのために……』
『あたし、やっぱ許せないよ……
明日菜がこんな目にあうなんて…』
潤んだ瞳で必死に唇を噛んでいる陽を見て、泣きそうになった。
自分のために泣いてくれる人がいるなんて、あたしは幸せ者だ。
