きっかけは、些細なことだった。



入学したばかりの頃はみんな大人しいけど、

だんだんグループができてくる。


うちのクラスもそんな感じだった。


今までは明日菜がいたけど、

自分から友だちを作らなきゃいけない。


『あ、あの……』


話しかけたのは、前の席に座っていた女の子。



少し明るめの髪の毛をサイドで束ねていて、


ぱっちりした目と小さな顔のかわいらしい子。


ほんのり化粧もしているようだ。



『いや、なんでもない……』


こんなかわいい子と友だちなんてなれないよ。


どうしよう。




迷っている間に、1日、1週間と時間は過ぎていった。





『ん〜、そんなに難しく考えなくていいんじゃない?』



『そうかなあ』



放課後、あたしは未だに友だちができないことを陽に相談していた。



『明日菜の良さみんなにすぐ伝わるよ!
勇気出して!』


陽の言葉はいつもポジティブで、あたしの心を引っ張りあげてくれる。



『ありがと。ほんと、陽がいてよかった……』



『あたしもだよ〜明日菜ぁ〜!』





陽は、いつも気持ちを素直に伝えてくれた。


好きもごめんもちゃんと言葉にして伝える子だった。




あたしはどこか素直になれずに、


心の中で思うだけで、そのほとんどを伝えられなかったね。




こんなことになるなら、伝えればよかったな。