♡♡二階堂side♡♡

教室に新しいクラスメイトの名前が響いた瞬間、ふと胸の奥がざわついた。
ゆっくり顔を上げると、視線の先に——見覚えのある姿があった。

今朝、桜の下で偶然出会ったあの子。
花びらを取ってやったとき、無邪気に驚いた顔を見せたあの瞳…。
ただの一瞬の出来事のはずなのに、妙に記憶に残っていた。

まさか同じクラスになるなんて。

「桜木さんは……二階堂の隣の席だな。」
先生の言葉に、思わず一瞬だけ視線を上げる。

……まさか。

彼女がぎこちなく歩いてきて、机にカバンを置く。
ほんの数秒、視線が重なった。

胸の奥が、思っていた以上にざわめく。

彼女がこちらへ歩いてくる。
緊張でぎこちなく、それでも一歩一歩確かめるように。
その姿を見た瞬間、なぜか胸の奥が温かくなる。

言葉を探したけれど、出てきたのは簡単なひと言だけだった。

「……一年間、よろしく。」

ほんの少しだけ口元をゆるめて、また静かに視線を伏せた。